仰天イカモノ堂

続・悲しきMPEG-2

MacはMPEG-2不毛地帯?

悲しきMPEG-2」でDVDレコーダーをめぐる戦いでWinに敗北した模様を描いたが、違う局面も眺めてみよう。MacでDVDレコーダーのデータを活用するには大きく2つの問題がある。

ファイルシステムの問題
Mac OS XはVRフォーマット記録に使われているDVD用のファイルシステムをサポートしていない。(Windows XPは標準でサポートしている。)
MPEG関連ツールの不足
Mac OS Xで動作するMPEG2のファイルを直接編集/加工できるソフトは極端に少ない。(音声がAC3だったりすると壊滅的である。)

散財の記録

今回の作戦の目的は「DVD-RAMに録画したテレビ番組のCM部分をカットしてDVD-Rに焼き直す」ことである。(2カ国語放送の音声をきちんと処理できて無劣化だとカンペキ。)

前述の問題を乗り越えてこの作戦を完遂できんもんかと、試行錯誤の段階でいろいろソフトを購入したりもしたりしちゃったりした。それらをリストアップしておく。

Pixe VRF Browser(DVD Multiドライブのオマケ)
Pixe VRF Browser Ex(6,195円)
DVDコンテンツ読み込みソフトウェア。DVD-RAM(RW)のビデオデータを取り出すソフトである。競合ソフトがいくつかあるとき「これしかない」といえば決定版ソフトを讃える意味だが、言葉の意味通りこれしかないので、これを使うしかない類いのソフトだった。チキンぷり〜ず、フィッシュお〜んり〜。多くは語るまい。
Cinematize(8,190円)
DVD-Videoから各種データを抽出できるソフト。発想とソフトの作りはシンプルでいいのだが、取り出す範囲を細かく指定できない(v2.0はできるようになった)のと、VRフォーマットをサポートしていないのは残念。
GreatVideo! for Mac OS X(5,400円)
UDFファイルシステム機能拡張である「ReadDVD!」とムービーファイルコンバーター「GreatVideo! Extractor」がパックになった商品。GreatVideo! Extractorは、はっきりいってなんの役にも立たないので、開発元のSAIからドライバであるReadDVD!だけバラで買ったほうが安上がり。
QuickTime 6 MPEG-2 Playback for Mac OS X(2,520円)
アップル純正 QuickTimeでMPEG-2を扱えるようにする再生コンポーネントだが、なんとAC3音声を再生できない(当然変換もできない)。Mac OS X標準添付のDVD Playerでは再生できるのになんでやねん。
iMovie(多くのMacにオマケでついてくる)
アップル純正 一般消費者向けビデオ編集ソフト。普段はFinal Cutを使うので、あまり試す機会がない。巨大なムービークリップ(2GB以上)は扱えないので今回の用途には不向き。
Final Cut Express(31,290円)
アップル純正 プロのようにビデオ編集したい人のための、ビデオ編集ソフト。
Pixe Burn!(DVD Multiドライブのオマケ)
DVDライティングソフト。なにも言いたくない。まあ、オマケに多くを望むのも酷であろう。
CaptyDVD/VCD(DVD Multiドライブのオマケ)
DVDオーサリングソフト。話したくない。どっかの出版社からメーカー公認ガイドブックも出てたと思うので、たぶん大人気ソフトなんだろう。新しいバージョンでは2カ国語音声のディスクを作成できるらしいが、買って後悔するのはごめんなので未確認。
iDVD(DVD-Rドライブ付きのMacにオマケでついてくる)
アップル純正 一般消費者向けDVDオーサリングソフト。普段はDVD Studio Proを使うので、あまり試す機会がない。
DVD Studio Pro(52,500円 )
アップル純正 プロフェッショナル向けDVDオーサリングソフト。プロ向けというだけあって機能的には申し分ないが(値下げされたものの)それなりに高価なソフトである。これでお金儲けができる人、あるいは趣味にはお金を惜しまない人でなければ普通は買わない。
Toast with Jam 6(25,000円)
CD/DVD統合ライティングソフト。リッピング機能もあり、メーカーの製品仕様にはできると(もできないとも)書かれていないが、VRフォーマットで記録されたMPEG-2データをDV形式で取り出せる(ReadDVD!併用)。別にJam自体は必要無いのだが、Jamの付いてないパッケージのToast 6 TitaniumではAC3音声を処理できない。

で、どれを使えばいいのじゃ?

身も蓋もないが、やはりMPEG-2を扱うならWindowsを使った方が幸せになれる。あるいは、最近のハードディスク内蔵高機能DVDレコーダーならレコーダー単体で処理しちゃった方が手っ取り早いかもしれない。

Pixe VRF BrowserとDVD Studio Proの組み合わせがなんとか目的を果たせるが、Pixe VRF Browserのできが良すぎてストレスがたまる。

劣化覚悟の方法としてDVDビデオのデータをDV形式やQuickTimeムービーに変換してFinal Cutなどビデオ編集ソフトでCMカットしてオーサリングソフトでDVD-Rにする方法がある。んが、これはMPEG2をデコードしてQuickTimeで再エンコードしたものを、またぞろエンコードしてMPEG2に戻すということである。特殊効果を入れるとか、他の画像と合成するといった目的がなければ、時間がやたらとかかるのでとてもじゃないがやってられない。

これらは、DVD-RAMに録画したトイ・ストーリー2をDV/QuickTimeムービーに変換するのにかかる時間を計ったものだ。1時間54分ほどの素材なのだが、2時間半〜9時間以上もかかっている。デコード、変換するだけでこれである。しかもToastによるものを除き変換結果は音声無し(AC3記録なので)。ファイルサイズは22.91GBにもなる。

Cinematize, GreatVideo!ではDVD-Video/MPEG-2の動画を「QuickTimeムービーとして取り出せます」と、サラッと書かれている。QuickTimeムービーとして取り出せるくらいだから当然MPEG-2ファイルとしても取り出せるだろうと期待した私がバカだったようで、そんなことはできない、ましてやDVD Studio Proで使えるようにエレメンタリストリームに分離してくれたりはしない。QuickTimeムービーとして取り出せるのではなく、QuickTimeムービーとしてのみ取り出せるのである。
※Cinematizeはv1.03からMPEG-2エレメンタリストリームを取り出せるようになったようだが、VRフォーマットはサポートしていない。

ReadDVD!があれば何とかDVD-RAMディスクをマウントできるので、オープンソース系のMPEGツールでいいのが出て来てくれないかなあ、などと期待するのだが(再生だけならVLC media playerでできる)。とりあえず、Toast with Jamにより取り出されたデータは今回試した劣化覚悟の方法の中で唯一まともであった。

やっぱり悲しい

iMovie → iDVD や Final Cut → DVD Studio Pro のようにオリジナルDV素材をベースにしたDVD-Video制作ワ〜クフロ〜では快適なのに、なぜテレビ番組をDVD-Rに焼き直すくらいでこんなに手間取る?

きっと「MacをCM抜きのごとき無味乾燥な作業に使うてはならぬ、Macは本来のクリエイチブな用途に使え」ということだ。そうだ、そうに違いない。

無理矢理納得してみたけど、やっぱり悲しい。(T^T)

(2004-07-30/2004-10-17)

MPEG2ファイルの編集だけなら

読者の川原さんから、MPEG Streamclipというフリーソフトがあるよとのメールをいただいたので試してみた。AC3音声もモニタしながら編集できるし、キーアサインもまともで、某社のソフトなぞに比べてはるかに使いやすい。2カ国語放送の音声(AC3 dual mono)も適切に処理できるようだ。ただ残念なことにAC3音声をチャンネル毎に別ファイルに分ける機能はないみたい。

とはいえ、ステレオ音声のMPEG2ファイルのカット編集にはもってこい、DemuxやConvertのパターンも多彩でなかなか使えそうなソフトである。ハードディスクレコーダのおともにピッタリではないだろか。

(2005-09-09)

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